原風景よみがえる刺繍― 愛着を育むテキスタイル-
このスツールの座面を飾る刺繍は、単なる装飾ではありません。
そこに込められているのは、作り手である私自身の幼少期の記憶。京都の海辺で過ごした日々の風景をモチーフにしています。
幼い頃に見た夕暮れの港、潮風に揺れる草木、遠くに浮かぶ船影。
それらが心に刻まれ、いつしか「原風景」として自分の感覚を形づくってきました。
その断片を糸に変換し、座面に縫いとめていくことで、記憶が具体的な模様として現れていきます。
刺繍の魅力は、平面にとどまらない質感です。糸の立体感や光の当たり方によって、模様が呼吸をするように変化します。
そこには単なる視覚的な美しさだけでなく、手触りや時間の経過による深まりも加わります。
使うほどに糸が馴染み、座る人の生活と共鳴していく。
それはやがて「愛着」という形で育っていきます
このプロセスは、個人の記憶から始まりながらも、使い手にとっては「自分自身の物語」を重ねられる余白を持っています。
ある人には海辺の思い出を、ある人には旅先の記憶を呼び起こすかもしれません。ひとつの刺繍が、使う人それぞれの人生に寄り添い、新しい意味を生み出すのです。
OMOÉMが目指すのは、まさにその「共鳴」。
記憶を縫いとめる刺繍は、単なるテキスタイルではなく、人と暮らしをつなぐ媒介となっていきます。
