災害廃材から新しい命へ
このスツールに使われている木材は、能登半島地震で倒壊した建物の一部なのです。
災害が頻発する日本では、このように歴史や記憶が貯められた災害廃材があちことで処分されている現状があります。
災害の爪痕を残す木材は、ひと目で見ると傷みや歪みがあり、家具としては扱いにくいものでした。
しかし「その記憶を生かすことに意味がある」と考え、再び活かされることになりました。
表面のひびや欠けは、研磨と補強を繰り返しながら丁寧に整えられます。けれど完全に「新品」には戻しません。表面を製材せず、傷跡をあえて残すことで、その木が歩んできた時間や背景を感じられる仕様となっています。デザインとしても、自然な風合いと歴史の重みを両立させることを意識しています。
さらに職人の技は細部にも活かされています。接合部には釘や金物を一切使わない伝統的技法”楔ほぞ継ぎ”という接合技法が採用されています。先人たちの技術を活用することで、トラディショナルでありながら、強度とデザイン性を兼ね備えた仕様になりました。廃材だったはずの木材が「もう一度、人の生活を支える存在」としてよみがえりました。
未来へ記憶をつなぐスツール
このスツールは、単なる家具を超えて「記憶をつなぐ装置」ともいえるかもしれません。木が本来持っていた命と、そこに込められた人々の思いを、使い手の暮らしの中で新たに積み重ねていく。まさに廃材からの再生と、未来への橋渡しが、この一脚に込められているのです。
